「もうすぐだから」
昨年、秋田市出身岡部千鶴子氏のエッセイを、当サイトに掲載させてもらいました。
最近、ネットの秋田魁新報電子版に「もうすぐだから」という岡部氏の小説が掲載されていたのを見つけました。
1978年4月21日、米ソ冷戦時代に起きた大韓航空機撃墜未遂事件について述べた岡部千鶴子氏の小説の感想です。岡部氏はこの飛行機の乗客の一人だったのです。
この事件では、韓国の航空機がソ連の戦闘機によってミサイルで攻撃され、不時着する事態が発生しました。
この小説では、大韓航空(KAL)902便の機内の状況、秋田に住む両親、そしてソ連とアメリカの軍関係者、さらにそれに続く政治家の思惑などが多角的に巧みに描写されています。
ムルマンスクという都市が物語に登場し、地図でその位置を確認しましたが、ソ連の思っていたよりも西に位置していました。ソ連の民間人が暖かく迎える場面は意外で心温まるものでした。筋が引き締まっており、一気に読み進めることができます。
本のタイトルを「もうすぐだから」とした意味も理解することができました。
大国間の駆け引きと飛行機事故を背景に、現代の世界情勢を考える上で非常に興味深い読み物です。是非お勧めします。
赤川均(S41E)